ボーダーライン〈前編〉

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 全員の自己紹介が終わり、各々食事とお酒を楽しんだ。

 先輩達も新入生も皆気さくでいい人ばかりで、僕のちっぽけな心配は杞憂に終わった。

 僕はお酒の経験は、お正月に少し飲ませて貰ってた位しかなかったけど、今回のこれで、意外とお酒には強いのかな? と感じた。

 フワフワと体が揺れるのを感じながら、先輩達もいい感じに酔いが回ったのか、席を移動して好きに話していて、それをぼんやり見ていた。

 いつの間にか隣にいた先輩がいなくなってて、その空いた席に座ってきたのは──紡木さん。

 ドクンと心臓が波打った。

「木庭…ノブくんって、私と同い年なんだねぇ。夏にハタチって言ってたけど、何月生まれなの?」

 カルーアミルクのグラスを片手に、頬をほんのり赤くさせながら紡木さんは聞いてきた。

「あ、はい…8月ですけど」

「えっほんと? 私もだよ、8月」

「えっ紡木さんも? そうなんですか?」

「あはは。もう、ノブくん、同い年なんだから、敬語じゃなくていいよ。名前も、ツムちゃんでいいんだよ」

「えーっ…まぁ…それは追々…今は紡木さんで勘弁してくださ…してね」

 なんかもう、紡木さんが色々可愛いので、途中から顔を見れなくなって、ごまかすようにグラスに少し残っていたモスコミュールをぐいっと流し込んだ。

「ふふふっ。わかったよ。追々ね。ノブくんて、おもしろいね。
 あっねぇ、サークル、入る気になったかなぁ? 入ってくれたらね、嬉しいよ」

「あっ、あー…ウン…じゃあ…入ろう、かな」

「ほんとー? ありがとー! け…松堂さんも喜ぶよ。
 えっとね、前にも言ったけど、このサークルは…」

 紡木さんはニコニコしながら、僕にサークルの概要を説明する。

 なのに、僕は別の事に気を取られて…松堂さんの名前を出す時の、紡木さんの態度。

 名前を言おうとして、いちいち苗字に言い直している。

 何故?

 今日こんなに紡木さんと話が出来たのに、それが妙に引っ掛かって…気持ちが晴れなかった。





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