ボーダーライン〈前編〉

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「お待たせして申し訳ございませんでしたぁ! どうぞ、中へお入り下さい! ご予約の団体様ご来店でーす!」

 17時を回り、店員さんにそう声を掛けられて、僕達は奥の広い座敷へ案内された。

 総勢15名、全員が席に着いたのを見計らって、松堂さんが「おほん!」と咳払いして話し始めた。

「えー、皆さんお疲れさまです。部長の松堂です。
 今日は新入生歓迎会ってことで、俺達もね、新年度入ってから初めてのまともなイベントです(笑)
 ま、肩の力抜いて、短い時間ですが楽しみましょう。
 3時間飲み放題食い放題なんでね、ガッツリいっちゃいましょー(笑)」

 松堂さんの挨拶にメンバーがわっと沸いたのを、松堂さんは「まーまーまー、まだ話終わってないから」と苦笑いした。

「おほん! えー、法律では…20歳未満は飲酒禁止と…されておりますが…
 幸い! 今年の新入生は全員一浪のー、ハタチ超え。
 でしょ?
 そうでしょ?
 そうなんですよー、ね!?
 ってワケで、遠慮せずジャンジャン飲みましょー(笑)」

 イエーイ! と先輩達が盛り上がる一方で、僕達新入生は思わずお互いに顔を見合わせた。

「ちーなーみーにー。
 小細工ナシで、法に引っ掛からないヒト…
 コッソリ! コッソーリ、手ぇ挙げて?」

 わざとらしく声を落として、松堂さんが僕達に目配せをする。

 すると、僕の隣にいた新入生のひとりが、遠慮がちに小さく手を顔の横に掲げて、

「俺、4月でハタチになりました、1年生です」

 と照れ笑いをした。

 それを見て、情けないけど僕は安堵した。そして、同じように小さく挙手をして、

「あ、僕も…一浪して、夏にハタチになります、新入生です。
 …あっ、その、今日は見学で、入ると決めたワケでは…」

 と言い切る前に、なんだよー! そこは入りますって言っとけよー! と笑いヤジが飛んだ。

 松堂さんと目が合って、ニヤリと笑われた。

 ほら、一浪だって気にするなって、言われているようだった。





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