ボーダーライン〈後編〉
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せーちゃんは横目の上目で、フリーズしている僕を見た。
女子がよくやるような可愛い上目遣いではなくて、せーちゃんらしい、かっこいい眼差しだった。
「あ…え…えー?
今、好きって…言っ」
「言った」
せーちゃんが僕の言葉を被せる。
ヤバい、ナニ、この半端ないドキドキは。
「えーと…その…
いつから、そのようなお気持ちに…?」
めちゃくちゃ動揺している僕を、せーちゃんはふっと笑い飛ばして、ソファーの背もたれに身を沈めて両手を組みながら話を続けた。
「あたしさぁ、社会人になって…色んな出逢いがあって、自分で言うのもアレだけど、付き合ってほしいって沢山言われた。
ってノブキは全部知ってるか(笑)」
はい、そーですとも。と心の中で相槌を打つ。でも、それをせーちゃんは全部断ったんだよね。
「いつも、神さんを好きな時の気持ちと比べてた…
あの時以上の気持ちにならない限り、あたしは新しい恋愛には行けないんだなと思って…た、んだけども」
ん? せーちゃんの話の方向がおかしい。
ならどうして、さっき僕を好きと言った?
一旦そこで言葉を切って、もう一度、僕を見る。
そして、ゆっくり言った。
「あの時だけなんだよなぁ…
卒業式ん時に転びそうになってノブキに後ろから支えて貰って、
めちゃくちゃドキドキしたの。
神さんの時の気持ちを越えたと思ったのは、その時だけ」
…