レンズの向こう側

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 (★)

「…ん…アレ…」

 カーテンに吸収されて柔らかくなった朝の陽射しを顔で受けて、あたしはゆっくりとまぶたを上げた。

 ノブキと二人で全裸のまま、シーツにくるまって横になって眠ってしまったみたい。

 ノブキはまだ夢の中、静かな寝息を立てている。

 あたしはノブキを起こさないようにそっとベッドを抜け出して、ちょうど寝室に置きっぱなしだった自分のジップフルパーカーを羽織った。

 ふと、ベッドヘッドに置かれたノブキのカメラが目に入った。

 あれでいっぱい撮られたんだよな…

 ベッドの縁にそっと座って、カメラを閲覧モードにした。

(………あああ~)

 液晶に映る、昨夜の綺麗な夜空の後の、あたしの、なんて淫らな姿、表情。

 あたし、ノブキの前でこんなカオしてんだ。

 自分の知らない、自分で見えない自分を、こう客観的に目の当たりにすると、なんつーか、なんつーか、もう。

「綺麗に撮れてる」

 肩越しにそう言われて、あたしは跳ね上がった。

 いつの間にかノブキがしっかり起きていて、腰に腕を巻きつけながらあたしの背中にぴったりくっついた。

「どこに保存しとこうかな」

「なっ! 消すって約束でしょうが!」

 ノブキの戯れ言に心底焦って声を上げると、ノブキはウソウソゴメンと舌をぺろっと出して、あたしのいかがわしい画像を全て消去した。

「ところで…
 さそってるの、ソレ?」

「へ?」

 何の事を言ってるのか分かってないあたしのパーカーの裾を、ぴらっと捲るノブキ。

「なんにもつけてないし、前もしめないで、えっち」

「だって、下着は下…ひゃあ!」

 全部言わない内にパーカーを剥ぎ取られて、また。

 すぐに気持ちよくされて、あたし達はひとつになった。





 二泊三日のふたりきりの旅行で、一線どころか、色々飛び越えちゃったあたし達だけど。

「ほらノブキぃ! 今日で帰るんだから、早く滑らないともったいない~!」

「まってよぉせーちゃん、
 荷物全部車に戻したよね? 忘れもんない?
 暖房消した? 電気消した? 貴重品持ってる? コテージの鍵は…」

 甘い時間が終わればいつものノブキせーちゃん、



 でも、また、ひとたび溺れたら、あたし達は…



 ……



 もうなにも、コワガラナイ。










レンズの向こう側〈完〉





[リアルタイム執筆期間]
2017年1月10日~2月21日

[改稿終了日]
2021年6月17日

[執筆BGM]
面影ポーズ / Something ELse






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【レンズの向こう側】あとがき





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