レンズの向こう側
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(★)
ノブキは一瞬目を見開いて、あたしを更に胸に強く閉じ込めた。
言葉も無くしばらくそうした後、ふわっとあたしの体が浮いた。
ノブキがあたしを腰から持ち上げて…そのままソファーの背もたれへ押し倒した。
手首を柔らかく押さえられ、あたしの脚の間にノブキの膝が割って入ってきた。
唇が近づいてきたので受け止めようと構えると、ノブキは唇にではなく耳たぶに押し当てた。
ノブキの唇の這う音、吐く息がすぐそこで、胸の奥がキュウゥと縮む。
「せー、か…
コワイ…
コワイ…のは、おれのほう…」
ノブキが耳に口をつけたまま言う、恥ずかしい刺激に耐えられるか不安だけど、ノブキの話に懸命に耳を傾けた。
「せーかと…付き合いだして気持ちが…
大きくなる一方で…抱きたくて…でも、
あの大学時代のバカだった時みたいな抱き方をしてしまうかもと…
それでせーかが…離れていってしまったらと…
コワクテ…
キスを沢山することで、抑えてた…」
そう、だったんだ。初めて聞くノブキのキスの裏付け。
「でも、ね、キスする度に見せるせーかのカオがね…もう…
もっと、ってとろけてねだってるカオを見せつけられる度…
アア限界だって。
先へ…キスの先へ…
デモ…アア…
せーか。ゴメン、せーか。
おれ、山小屋でやっちゃったんでしょう?
せーかのこわがるコト、やっちゃったんでしょう…?
おれ、いい夢見てて…目が覚めたらせーかが泣いてて…
ゴメン、ゴメンね…」
やっぱりだった。ノブキ、勘違いのまま落ち込んでた。
ちゃんとノブキに言わなくちゃ。
このままだとノブキ、別れようなんて言い兼ねない。
「ノブ。ノブ聞いてよ」
あたしは耳に吸い付いたままのノブキの頭をそっと抱えて、言った。
「山小屋で…泣いたのは…
ノブが寝呆け半分で密着してきたから…
あたしは…すごく嬉しかったけど…
でもノブは覚えてないかもって…思ったら…っ」
いけない…また涙がにじんできた。
…