レンズの向こう側
33/48ページ
ロッジで早い晩ごはんを済ませたあたし達は、コテージに向かって歩き出した。
片手にスキー道具一色、空いた手同士で繋いでいたんだけれど、ノブキが少し前を歩いてあたしを引っ張る感じ。
満天の星を見上げながら歩いてたあたしは、ノブキの背中に向けて言った。
「ノブキ? もう少しゆっくり歩こうよ。星、沢山出てるよ」
「ん? ウン。きれいだね」
それだけだった。
いつもならはしゃいでカメラを構えるシチュエーション。
それをしないのは…やっぱり、山小屋でのあたしの態度を気にしてるから?
いつもの雰囲気に戻ったと思ったのはあたしだけだったのか…
急に気持ちが沈んで、あたしも無口になった。
その様子にノブキが気付いて振り返った、何か言いたげに顔を歪めてる。
いけない、また不安にさせた。もう笑顔でいるって決めたのに。
あたしはノブキの目をしっかり見つめながら、ニコッとした。
するとノブキの顔も緩んだ。
「ごめんね。
せーちゃん寒くない? 早くコテージであったまりたいかなと思って…」
ノブキらしい気遣いが嬉しい。なのに、あたしはわがままを言っちゃう。
「ちょっとだけいい? 止まってノブキと眺めたい」
「ウン。
…あ、ゴメン、1枚だけ」
そう言って、スキー板を積雪に差してミニザックからカメラを出した。
大分後ろへ下がってあたしと星空が収まるように、カシャリ。
あたしの隣に戻ってきたから、
「見せて?」
と言うと、
「ウン?
…あとでね」
囁くように言ってカメラをしまって、あたしの頭を静かに抱き寄せた。
その拍子にあたしは持っていたスキーを放して、ノブキの腰に両腕を巻き付ける形に。
あたしの重みを全て受け止めたノブキはよろめいて、雪に尻もちをついた。
頭を抱えられたままのあたしも一緒に、雪に膝をついて、ノブキの脚の間に収まった。
…