レンズの向こう側
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おじさんが慌ててお肉をひっくり返して、パラパラと塩コショウをしている間、あたしはおじさんの言葉を噛みしめていた。
ノブキの笑ったとこ、いつから見てないっけ。霧で焦燥した辺りからか。
あたしが不安にならないように、沢山機転を利かせてくれたのに。
一方のあたしは、なんにも出来ないで、その上ノブキを傷つけて…泣いたあたしはズルいよな。
ノブキが戻ってきたら、笑顔で迎えよう。
うん、と心の中で頷いて空を仰ぐと、さっきよりも多く星が瞬いていた。
「よし…っと。ほい、出来上がり。
そういや言ってなかったな、うちは鶏ももの塩コショウ一本勝負よ。
早くカレシに持ってってやんな」
「へ? …あ」
おじさんが焼き鳥を包んだラミパックをあたしに渡しながら、ロッジの方を顎で差した。
ガラスの向こうに、キョロキョロと落ち着かないノブキが。
「やば、ロッジの中で待っててって言われてたんだった」
「なぬ。そりゃおねーさんがいけねぇわな。早く行ってやりな」
おじさんに支払いをして焼き鳥を受け取ると、ズッシリ重たい。
中を覗くと、注文した本数より多い。
「えっ、これ」
「おじさんからのオマケだ、持っていきな」
これ以上あたしに何も言わせないように、おじさんは背中を向けて次の肉を焼く準備を始めた。
「ありがとう、おじさん。
カレもきっと気に入ると思う」
おじさんが振り向かないまま手を上げたのを確認してから、あたしはロッジに駆け込んだ。
「…あっ、せーちゃん! どこにいたの? 探しちゃったよ」
あたしがノブキの背後に近づいた気配に気付いて、
ノブキが振り返った。
「…わは、ノブキ、それだとどんなに探しても見つけるのは大変なんじゃ?」
ノブキの眼鏡、真っ白に曇ってた(笑)
…