レンズの向こう側
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「うわあ、やわらか!」
家族連れがお肉のかけらを口に入れると、ほっぺが落ちそうってくらいにとろけた顔をした。
あたしも口へ放り込む…わっ、塩コショウ加減が絶妙!
ノブキにも食べさせたいな…と思っておじさんに注文しようとしたら、家族連れが先に10本ほど購入して、焼き上がったものはとうに無くなった。
「おじさん、6本ください」
「あいよ。新しく焼くから待っててくれるかい?」
あたしはこくりと頷いて、少し横へ捌けて出来上がりを待つ。
「おねーさん、カレシは一緒じゃねーのかい」
おじさんがあたしを見ないままそんな事を言ったので、あたしは心底びっくりしておじさんを見つめた。
「え、あ、なんで」
あたしがしどろもどろに言うと、おじさんはクククと笑った。
「昼間、ここで準備始めようとした時に見かけたのよ。
カレシ初心者か? めちゃんこヘタクソだなあ(笑)
おねーさんも呆れながら教えてたろ。
でもすっごく楽しそうに笑っててさ。
いいなー、若いっていいなーっておじさんは見てたわけよ(笑)」
わは、へんなとこ見られてた(笑) ノブキを教えるのに夢中で、実は相当騒がしかったみたい。
「今ちょっと管理事務所に用があって…そろそろ戻るとは思うけど」
「そうかい。
よかった、ケンカしたとかじゃないんだな」
おじさんの言葉にまたドキリとする、おじさんもまた、クククと笑う。
「さっき、浮かないカオで滑ってきたろ…おねーさんもカレシも。
いっぱい滑って疲れたか?
でも、なるたけ笑ってた方がいいぞ?
誰だって、好いたヤツの笑顔はいつも見てたいもんだわな。
…おっとっと、焦がしちまう」
…