レンズの向こう側
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ノブキの大胆な行動に若干呆れ気味のあたし、無言で置き去りというお仕置きをひとまず実行。
食べ終えて空になった食器を返却して、そのまま外に出た。
「えっ、待ってよお、せーちゃん」
てっきり席に戻るんだと思っていたノブキ、情けない声を出しながら立ち上がった。
(忘れもんしてない? 帽子ある、ゴーグルある、貴重品…)
ガラス越しだから全然聞こえないけど、ノブキの手振り身振りからきっとそんな事言ってんだ、と思いながらあたしはスキー板を装着した。
ノブキがバンガローから出てきて、あたしに早く追いつこうと焦って、スキー靴がビンディングにうまく嵌まらずモタモタしている間に、あたしはもうリフト乗り場に着いてしまった。
このままひとり乗っていってしまおうかとも考えたけど…やめた。
ノブキが着くまでに、深呼吸を何回か繰り返した。
「よかったぁ、先に行ってしまうかと思った」
待ってたあたしを見つけると、ノブキは慣れない足つきでスケーティングしてきた。
まあなんと、仔犬みたいなカオしちゃって。
お仕置きはもうおしまい、手を差し伸べると、嬉しそうにその手を取るノブキ。
そこをさっきの、あたし達のキスを目撃した女の子達がまたひゃあぁと声を上げて、足早に通り過ぎた。
バカップルと思われたな。何の罰ゲームよ、これ?
「…ごめんって」
お仕置き続行を掠めたあたしの手をノブキがブラブラと揺らす。許して欲しそうにあたしを見つめるから、もういいや。
「…ばーか。ほら、乗るよ」
少し恨みを込めてじと目を飛ばしてから、あたしはノブキを引っ張ってリフトに乗り込んだ。
…