レンズの向こう側

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「ふわあ~、景色最高だね!」

 リフトから降りるや否や、ノブキは間抜けな声を出しながら、パシャパシャとファインダーを切った。

「あ、せーちゃん先に滑ってていいよ。俺、もう少し撮ってから行くから…」

 なんだとっ。カノジョをひとり滑らせて放ったらかしにするのか!?

 なーんて事は思わないけど…でも、一緒に滑るの楽しみにしてたんだよ。

 ノブキ、スキーの経験は高校の修学旅行で一度きりって言ってたから、きっと八の字でゆるゆるとしか滑降出来ないだろうから、あたしがビシバシと指導しようと思ったのに。

 しばらく動きそうにないノブキにそっと溜め息をついて、

「じゃあ、あのフラッグのとこまで滑ってるからね」

 と声を掛けてから、あたしは初心者コースの斜面を滑り出した。



 平日だけどガラんどうではない、試験が終わって休みに入った学生かな? 若者達がそれなりにいて、ちょっと賑やかだ。

 本当はもう少し難しいコースを滑りたいんだけど、それは初心者のノブキには鬼なので(笑)

 でも初心者の敷地は本当に狭くて、すぐに飽きてしまう。やっぱりノブキを教え込んで、中級ぐらいは滑りたいな。

 斜面の端から端を、両足を揃えるやり方のパラレルでゆっくり滑る。ノブキがいつ追いついてもいいように。

 滑降中にリフトの終点を見る…ノブキ、まだ写真撮ってる。

 また、はあ、と溜め息をついた時に、ノブキがこちらを向いた。

 うん? と思って、ノブキから目が離せない。そんな感じでよそ見をしてたから、

「…おわあ!」

 バランスを崩して、あたしは派手に転んだ。と言ってもちゃんとおしりから着地したんで、全然痛くはないけど。

 ただ、スティックを遠くへ滑らせてしまって、追いかけようと上半身を起こした時に、

「大丈夫でしたか? あっスティック拾ってきたんで…起きれますか?」

 斜面の下からスキーヤーの男が階段登行であたしに近づいてきた。

 親切な言葉の割りには…声がなんだか軽い。





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