レンズの向こう側
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お弁当を食べ終えて、二杯目のお茶を飲みながら二人でバラエティー番組を観ていると、ふいにお互いの手の縁が当たって、同時に顔を見た。
「……」
「……」
ノブキが恥ずかしそうに頬を赤らめながら、ゆっくりと唇を寄せてくる。
寸前で止まって、ノブキの熱い息がかかると、あたしの頭はボンヤリとしだす。
あたしのまぶたが下りるスピードに合わせるように、あたしの唇にかかる柔らかさがじんわりと広がった。
ノブキとのキスはきもちいい。どんどん高揚していく…
「…ッン…」
キスを続けたまま、ノブキはあたしのこめかみから手を髪に差し入れて、少しだけあたしを自分の方に寄せた。
その拍子にあたしは思いきりノブキに覆い被さるように倒れた。
な、ちょっと、これじゃああたしがノブキを押し倒してるみたいじゃん。
ノブキが下からあたしを見つめる。
あたしもノブキを上から見つめる。
何秒か視線を絡めた後、ノブキが髪を梳いた手に力を入れたから、それを合図にまた唇が吸い寄せられた。
が。
【♪~。お風呂が沸きました。】
これまたいつの間に準備したんだろう、湯沸かし完了のアナウンスがコテージ内に響き渡り、
「あっ沸いた沸いた。せーちゃん先に入って? 運転で疲れたでしょ、足伸ばしてゆっくり浸かってね」
今までのはなんだったのか、ノブキはあたしからさっさと離れて、備え付けのバスタオルを出す為にクローゼットの方へ行ってしまった。
なんだなんだ、もう。
いよいよかって思ったあたし、ばか?
すっかり気が削がれて、ノブキの言う通り先にお風呂を頂いた。
湯船は二人余裕で入れる広さ、もしかしたら一緒に、って思ったあたし、ばか?
あたしが出ると、ノブキはソファーをベッドに変えて(ソファーベッドだった)整えているところだった。
「あっせーちゃん、せーちゃんは上のちゃんとしたベッドで寝てね。俺、ここで寝るから。
お風呂入ってくる、せーちゃんは先に寝ててね。おやすみー」
おいーっ!
お風呂へ向かうノブキの背中に、あたしは恨めしげな視線を投げた。
もういいわ、明日のスキーの為にさっさと寝てやる。
…