レンズの向こう側

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「ノブキ、こっちこっち」

「せーちゃん、まって」

 ゲレンデの敷地内に入り、管理事務所でチェックインを済ませると、あたし達は荷物を抱えて宿泊するコテージエリアを目指した。

 昔とちっとも変わってないから道を覚えてる、辺りが暗くても迷わず行けた。最後に来たのは社会人1年目の冬、同期の仲間達と。

 そこに着く頃には雪の粒が大きくなって、あたし達はすっかり綿帽子を被った。

「わあ、なんか洒落た感じだね?」

「うん。あたしもこのミニサイズのコテージは初めてだよ」

 ここは欧風のコテージが10棟ほど集まっていて、4人までのと、12人までのがある。

 いつも大人数で来てたから、かえってこの手狭な空間が心地いい。

「あーっ、やーっと横になれるぅー」

 あたしはリビングの二人掛けソファーに思いきり背中を預けた。

「お疲れさま」

 そばのローテーブルに買ってきたお弁当を並べて、いつの間に用意したんだろう、熱々のお茶の入ったマグカップをふたつキッチンから持ってきたノブキは、あたしの隣に腰を沈めた。

「なんか、前もって暖房入れてくれてたみたいだね」

 ああそれで。ノブキがタイミングよくお茶を持ってくるわけで、窓のところにいい感じにつららが出来てるわけね。

「せーちゃんにばかり運転させてごめんね」

「いーえー。こっちの方はあたしの方が道分かるし。雪道も慣れてるからね」

 うん、とノブキは申し訳なさそうに頷いて、お弁当を少しずつつまみながら、窓の外に目をやった。

「ちょっと…吹雪いてきたね。せーちゃんナイタースキー楽しみにしてたのに」

「いいよいいよ。ほらノブキ、明日はピーカンだって。明日沢山滑ろうね」

 ちょうどテレビで天気予報が流れていた。スキーの体力は明日まで温存、今日はもうノブキとまったりしたかった。

 これまであたし達は、次の日まで一緒に過ごした事がない…必ずそれぞれの家へ帰っていた。

 でも今日、そして明日も、あたし達は帰らなくていいんだ…



 ノブキ…この状況をどう思ってる…?



 あたしは…



 すごくドキドキしてるよ。





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