シークレットガイド

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 #坂本輪業



 サイクリングロードから歩いて約5分の所に、行きつけの自転車屋さん『坂本輪業』がある。

 ここは、よく知っている友達の家。そして、うちの小学校のヤツならたいていここでお世話になる。

「こんにちは!」

 声を掛けると、こちらに背を向けて自転車の整備をしていた店長が、肩越しに顔を向けて、

「おぉ、まもちゃんか。待ってたよ。前に言ってたアレだろ?
 ってなんで、みんな揃ってランドセルなんだ?」

 と言った。

「それは…言い出しっぺに聞いてよ」

 僕が灯琉に視線を送ると、

「シークレットよ、シークレット」

 腕を組んでふんぞり返る灯琉。そのすぐ後、キョロキョロと辺りを見回して、

「アイツは…いねぇだろうな?」

 と言った。

「あぁ…ヒロくん? ねぇおじさん、ヒロくんはいないの?」

広史ひろしか? 朝早くに出て行ったよ。友達とサッカーしてくるとさ」

 ヒロくんは、3、4年の時のクラスメイトで、灯琉以外では一番仲が良かった。(灯琉とはクラスが別だった)

 ヒロくんも、灯琉とはちょっと意味が違うけどクラスの中心人物で、二人は何かと比較されがちだった。

 それだから、灯琉はヒロくんをライバル視している…ように見えるけど、本人は否定する。

「さぁ、こっちにおいで。どの自転車がいい?」

 整備の区切りがついたらしく、おじさんはスッと立ち上がって、僕達をレンタサイクル用の自転車が並ぶ場所へと手招きした。





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