シークレットガイド

41/41ページ

前へ


 #シークレットガイド



 灯琉との電話を切った後、僕は本棚の上に乗せていたタイムカプセルを抱き寄せた。

 図工の時間に作った、不格好な木箱。これでも4人で作った中では一番の出来だったので、僕のが選ばれた。

 そっとフタをスライドさせて、灯琉からの唯一の手紙を取り出す。

 タイムカプセルを掘り出したその日も、僕とえだっちと今ちゃんとで読んだし、この手紙が届いた当時も、芦屋クンも含めてみんなで読んでいた。





【真守、元気?
 みんなも変わりないか?
 まぁ、まだひと月経ってねぇもんな。

 東京さぁ、もっとごみごみしてるとこかと思ってたけど、意外とそうでもねぇ。
 てか、ここ、東京の端っこだし。緑に囲まれてなかなかいい所よ。
 こっちの奴らもなかなかいいよ。ゲームばっかしてるのがちょっと気になるけど、まっいいか。

 俺さぁ。
 やっぱり、せめて、そっちで小学校を卒業したかった。
 俺って、卒業アルバム貰えるのかな?

 あー、それからさ。あの日の事。
 みんなにちゃんと言わないで別れちゃったから、今書くな。

 俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。
 ランドセル背負って自転車走らせた事。
 色々寄り道した事。
 みんなであんなに泣いた事。
 俺一生忘れねぇから。

 たまにそっちに帰りたいって言うと、父さんが渋い顔をするから、あ、無理なんだなって思ってる。
 でもいつか、父さん関係なしに俺ひとりでそっちに行ける時が来たら…
 その時はよろしく。

 じゃ、また手紙書くな。つうか、今度はお前の番。待ってるからな。
 えだっち、今田、芦屋にもよろしく言っといて。



 灯琉より





 P.S. 芦屋はクラスに馴染んだか?】





 これを読んだ芦屋クンは大号泣、教室で読んでいたから、クラスのみんなが何事かと集まった。

「大丈夫だよ。ボクは、大丈夫だから」

 多分灯琉に向けた、芦屋クンの言葉。










 僕ももう、あの近くには住んでいない。同じ市の少し栄えた所に住居を構えて、家庭を築いている。

 灯琉が一泊した後、二人でサイクリングロード、いや今は○○ロードって言うんだっけ、走ろうか。

 自転車、どこで借りよう。坂本輪業はとっくの昔に閉まってるし、他にあの近辺であるか調べてみよう。

 灯琉はどんなカオをするかな?





 今度は僕が、秘密の案内シークレットガイドをする番だ。










シークレットガイド〈完〉





[リアルタイム執筆期間]
2015年7月1日~7月30日

[改稿終了日]
2021年6月5日

[執筆BGM]
始めの一歩 / ゆず






※よければこちらもどうぞ
【シークレットガイド】あとがき
【シークレットガイド】おまけ





41/41ページ
スキ