シークレットガイド
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#ライダー
僕達がサイクリングロードに乗り上げて横一列に並んだ時、土手の下の方からライダースーツを着た若い男の人が上ってきた。
その人は地図の冊子を至近距離で見つめながら、
「今ここで、ここに行きたいんだから…くーっ、混がらがってきたーっ」
とブツブツ言っていた。
サイクリングロードにそぐわない出で立ちに僕達が視線を送ると、その人はこちらを向いて、困ったような顔をして声を掛けてきた。
「あっ、ねえ、キミ達。○○総合体育館って知ってる? 知ってたら、行き方教えて欲しいんだけど」
「○○体育館って、どこの事だっけ?」
「ほら、スケート場のとこだよ」
「そうそう。地下鉄で行った方が早いと思うけど」
「その駅、どこ? これに載ってる?」
お兄さんが地図を広げて僕達に近づいてきた。僕達は一旦自転車を立てて、お兄さんを囲って一緒に地図を見た。
「わっ、縮尺ちっさ。え…と、○○駅。あった。コレ。体育館はこの辺だよ」
えだっちがスッスッと指を滑らせて、お兄さんに教える。
「サンキュー。え…と、この大きい道路が…そこに繋がってんのね。おっしゃ!」
お兄さんの指が、地下鉄の路線ではなく車道を辿る。格好で一目瞭然だけど、バイクで行くんだろう。
お兄さんが来た方を見ると、大型バイクが2台、サイクリングロードのすぐ脇の路肩に停められていた。
「…あぁ~、でも、間に合うか? ホノカの試合」
お兄さんは希望が見えて顔を輝かせたかと思ったら、眉間にしわを寄せて後頭部をガシガシと掻き出した。
…