シークレットガイド

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 #最後の姿



 僕達が坂本輪業に自転車を返しに行けたのは、陽がすっかり落ちた頃だった。

 本当はもっと早くに帰れたけど、少しでも長く5人でいたくて、帰りのサイクリングロードではノロノロと自転車を走らせた。

 僕達はほとんど口を開かなかった。涙と一緒に言葉まで流れ出てしまったようだ。



 店先にいたおじさんは、泥だらけの僕達を見てビックリしていたけど、やけに遅いと心配していたから心底ホッとしたようだった。

 濡らしたおしぼりを順番に渡して、

「きったねぇ顔してるな。これで拭いて、早く家に帰りな」

 と言ってくれた。

 顔を拭き終わり、背中のランドセルを背負い直す。

 奥から、ヒロくんが茶碗と箸を手に様子を見に来て、

「ははっ、今から学校行くみてぇ」

 と言うと、灯琉はにやりと笑って、

「先行ってるぞ。お前らも早く帰れよな」

 ランドセルをガシャガシャと言わせながら灯琉は駆けていってしまった。



 僕達はそれを追う事が出来なかった。



 じゃあねも、またねも、声にならなかった。





 …灯琉のランドセル姿を最後に見た日。





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