シークレットガイド
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#川
大きくて浅い、キラキラと水面が光る、自慢の町の川。
気だるい夏は過ぎかけていたけど、今日はまた暑いのがぶり返したから、泳いだり魚釣りをしたりする子達がいた。
僕達は河川敷に自転車を並べて、川岸に歩み寄った。
「あっ! 今、でっけぇの泳いでた!」
灯琉は目を輝かせて、あっという間に靴と靴下を脱ぎ捨てて、ザブザブと川の中へ入っていってしまった。
「お前らも来いよー」
「ちょっと灯琉? 今日は水着も着替えも持ってきてないんだからね。
ずぶ濡れになったらたまったもんじゃない。この後の事、考えてる?」
「おっ、こっちに泳いできた! おりゃっ」
えだっちが口を尖らせて言ったけど、灯琉はまるで聞いてない。魚影を追ってバシャバシャと両手を突っ込んだ。
結局僕達も川に足まで浸かって、灯琉の魚追いを手伝ったけど、上手くいかずに服だけがどんどん濡れていく。
「うわぁーーー!」
突然響き渡る、芦屋クンの悲鳴。
「なんだ!?」
「どうしたの!?」
一斉に芦屋クンを見た。芦屋クン、顔面蒼白。
「ア、ア、ア、足…ーーっ」
芦屋クンの足元に視線を落とすと…足に吸い付く、ヒル2匹。
「おわっ、ヒルだ」
「芦屋クン、今取るからじっとしてて」
「うへーっ、真守くんも灯琉も、よく摘まめるね」
「僕も無理ぃ。ヌメヌメきらーい」
えだっちと今ちゃんが身震いして遠巻きに眺める中、僕と灯琉は芦屋クンからヒルを剥がして、川の中央へ投げ込んだ。
「大丈夫? 血、吸われなかった?」
「う、うん…あぁ、ビックリした。気持ち悪かったぁ」
「こんな所でヒルが出るなんて珍しいな。ふつー、草とか葉っぱの下にいるんだぜ。
吸われる前でラッキーだったなぁ。気付かなかったら血まみれだったぞ?」
灯琉の決して冗談ではない脅しに、芦屋クンは気を失いそうになってた。
「ほらぁ、灯琉が油売るから。早く上がって、先に進もうよ!」
ちゃっかり、もう川岸に上がって足を拭いているえだっち。
まだ魚を追いたげな灯琉を引きずって、僕達は先に進む準備をした。
この後の為にタオルだけは、沢山持ってきてあったので助かった。
…