シークレットガイド

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 #一騎討ち



 5対8の草サッカーが開始された。

 人数もだけど、1組側はほとんどがフットサルクラブに通っているヤツばかりで、僕達の不利は明らかだった。

 容易にこちらの陣地に攻められる。だけど、ゴールを割られる事はなくて、それは、意外に今ちゃんが機敏な動きをするから(笑)

「えええ、あいつ、あんな体なのに動きが速ぇ!」

 1組チームが舌を巻いた。

 えだっちと芦屋クンも、小さいながら懸命にゴール前を守る。

 芦屋クンがこぼれ球を拾って、僕にパスが通った。続けて灯琉にボールを送ると、ヒロくんが灯琉の前に立ち塞がった。

「坂本広史ィ! ショーブだー!」

「フルネームで叫ぶなっつーの、恥ずかしいだろ灯ザル!」

 苦笑いをしながら、ヒロくんは灯琉の足元を執拗に狙って、ボールを奪った。

 でもその先を行かせない、灯琉が見事なディフェンスをする。ヒロくんはボールをうまく捌きながらも、灯琉を抜けないで焦っているようだった。

「ヒローッ、さっさと抜いちまえーっ」

「ボール奪い返せ、灯琉ーっ」

 二人の一騎討ちの邪魔をしたくなくて、僕達は外野で声援を送る。

 ゴール前で両手を握りながら勝負の行方を見ていた芦屋クンが、

「と…とも…灯琉くんーっ、がんばれーっ」

 と叫んだ時、灯琉がボールをヒロくんの足元から蹴り出して、そのまま敵のゴールへ駆け込んだ。

「うおー、りゃあぁ!」

 渾身のドリブルシュートは…

 弧を描いて、ゴールを大きく外れて、裏っ側へ飛んで行った。

 ヒロくんを抜いたまではかっこよかったのに、残念。

「わりーわりー。せっかく芦屋が繋いでくれたのになぁ」

 ペロッと舌を出して頭を掻く灯琉に、芦屋クンはふふっと笑みをこぼした。





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