シークレットガイド
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#いつもの公園
水島さんと智子と別れた地点からさほど離れていない所に、僕達がよく行く大きな公園があった。
そこはサイクリングロードのすぐ脇にあって、誰もが立ち寄りやすかった。
「まだお昼じゃないよな? 遊んで行こーぜ!」
「そんなぁ。ボク、かなりハラペコだよぉ」
泣き顔の今ちゃんを無視して、灯琉は自転車置き場のサイクルスタンドに前輪を突っ込んで、さっさと自転車を降りてしまった。
「うわぁ…すごい! 遊具がいっぱい」
芦屋クンが感嘆の声を上げる。
「でしょ? 面白いのいっぱいあるよ。
ほら今ちゃん、お昼はここ終わってからの楽しみにしとこうよ」
「うぅ~ん、わかったよぅ。しょうがないなぁ」
今ちゃんをなだめながら、芦屋クンと一緒に自転車を降りた。
「わははははー。早く来いよー」
灯琉がひとりでターザンロープにしがみついて、シャーッと滑走していた。
「なんか…ほんとにおサルだね、灯琉は」
スタート台で順番を待つえだっちがポツリと言った。
灯琉がロープを引っ張って戻してえだっちに代わった時、こんな事を言った。
「真守、芦屋、お前らも一緒に行っちまえ」
「はっ? ムリに決まってるっしょ。ねぇ真守くん?
え、ちょ、ナニ」
「あはは。実はいけるんだよね、実証済み。
芦屋クン、えだっちの向かいにしがみついて。えだっち、少し膝開けて。そこに芦屋クンのお尻がくる」
ロープにくくりつけられた大玉の上で、えだっちと芦屋クンが互いに両脚で挟み合う形で座る。
「ウ、ウン。これでいい?」
「うひーっ。3人、ムリムリ! 真守くん来ないで!」
「ここ足入れるよ!」
えだっちのギャースカ言う声を気にせず、僕はえだっちと芦屋クンの間のわずかな隙間に片足を入れて、玉の上に立ち上がった。
「やるじゃん真守。よし今田ァ、押すの手伝え!」
「りょーかぁい。そーぅれ!」
灯琉と今ちゃんがめいっぱい押すと、ありえないスピードでターザンロープが滑走した。
「うぎゃー!」
終点でガコン! と大きな音を立てて激しく揺れたが、僕達は必死にしがみついたので、振り落とされなかった。
勢いで半分くらいまで戻って止まった時、僕達は馬鹿みたいに笑った。
「ちょっとー!? かーなーり、恐かったんですけどー!?」
えだっちだけは心臓がバクバクだったようだけど(笑)
「あれー? オーイ! 真ー守ー!」
ゲタゲタ笑ってるところでそんな声が聞こえて、そちらの方に振り向くと、奥の広場で誰かが手を振っていた。
坂本輪業の息子、ヒロくんだった。
…