空の兄弟〈後編〉
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それでも日本はなんとか持ち直した。
焼け野原にはあっという間に家が建ち並んだし、食べ物にも困らなくなった。
俺が新制の小学校に通うようになってからは給食が始まって、少なくとも腹が鳴り止まないなんてことはなくなった。
復興の兆し見えた頃、ふと我に返る、鷹の奴は今何してんねやろ。
あの後にも何通かあいつから便りが来とったようやが、俺は腹がへってそんなもんにかまってる余裕なんかなかった。
「こんなヨレヨレの字じゃあ、いくら悟くんが字を覚えても、とても読めやしない」
ああ、たしか伯母さん、そんな事言っとったかな。
あいつからの手紙は、戦争が終わってしばらく経ってから、ぷっつりと途絶えた。
そんなことにも気付かなかった餓鬼の俺。
伯母さんも鷹の事は何も語らなかった。
「鷹、生きとるなら、はよ帰ってこんかい」
小学校ののぼり棒のてっぺんでぽつり呟いた、不意に涙も滲む。
悲しきかな、鷹を思ったのはこの一回のみ。
正直に言うと、俺はもう鷹に会いたいなんて思わなくなっていた。
元々そんな気を起こしてたわけやないと、冷たく澄ます程。
──ところが、鷹は俺の前に現れた。
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