空の兄弟〈後編〉
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「伯母さんにな、入れ物作ってもろてん」
袋の口を固く閉ざした紐が解かれ、中身が悟の小っちゃな手に転がり込んできた。
鈍く光る青、濁った宝玉。
「た
鷹、黙ってうなずくだけ。
「ほんならこれ、お前持っていき。
覚えとるか、俺が指輪無くした後にお前がどっからか見つけてきたビー玉やねん。
あの指輪のより青が深くて、海みたいやなあ」
新しい宝物をもう一度大事そうに袋に閉じ込めて、悟はそれを鷹の首に掛けてやった。
「あ、言うとくけどな、それ、貸すだけやねんぞ。
ちゃあんと返しにこなあかんで。
お前約束守れるか、男と男の約束やぞ」
そう言うと、悟は鷹の右手の小指を無理矢理立たせ、自分の右手の小指を絡ませた。
「ありがとう」
「うわあ!」
鷹の、ただただ素直な感謝の言葉に、悟は突然素っ頓狂な声をあげて応える。
「こいつ、お礼言いよったで、初めて聞いたわ!」
多分照れ隠し、悟は両目をめいっぱい開き、思いきり笑い飛ばした。
月灯りに照らされて灰色を帯びた、空の坊やの茶色い瞳。
青が好きな鷹は、もうひとつの色を好きになる。
空の坊やの、透き通る鳶色を、忘れたくないと思った。
悟は仰向けになり、再び布団を叩き出した。
この振動は、今度は鷹だけでなく叩いている悟の脳にも伝わり、手の太鼓のテンポをだんだん鈍くさせていく。
やがて揺さぶりが止んで、鷹の瞼はこの時すでに重かったが、朦朧とした意識の中で、悟のすうすうと寝息を立てるのを聴いた。
これが俺の子守唄かと、深い眠りに落ちる一歩手前までに来た自分を鷹は苦笑した。
雲が流れ、しばしば月灯りが遮られ、昏々と眠る空の兄弟を、暗灰の世界と蒼白の世界が交互に導く。
この晩で間違いなく、鷹から発作の影が消えてなくなった。
…