空の兄弟〈後編〉

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 その様はまるで雪女に見えて、謳い文句のようなその言葉はとても小さな声、耳の利く鷹しか聞こえなかった。



 青山は最低だ
 人々は戦争なんか早く終われと
 思っているはずなんだと
 言っておきながら
 自分は出兵が決まって
 馬鹿みたいに歓んでいる
 矛盾だらけの青山は最低だ
 嘘つきだ



「なんだと、この、非国民!」

 この言葉を怒鳴った鷹の代わりに、悟がはっとした。

 風結子が何て言ったのか、もちろん悟には聞こえなかったけれど、鷹が風結子にこの暴言を吐いた事が問題なのはすぐに解ったのだ。

 鷹は、風結子が戦争に対して激しい怒りと悲しみを抱いている事を、この時ばかりは忘れていたのだ。

 自分の夢がもうすぐ叶うことを、彼女には一番に喜んでほしいのに。

 裏切られたという気持ちが渦巻いて、鷹は気分が悪かった。

 何も知らない洪助たちが、突然怒り出した鷹を不思議に思いながらなだめている間に、風結子は表情を変えずそのまま家へ向かっていった。

 鷹はしばらく黙り込んでいたが、やがて、再び温和な様子で自分の出兵話に花を咲かせた。

 悟が途中で姿を消した事にも気付かない程、鷹は夢中になって話をした。





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