空の兄弟〈後編〉

29/83ページ

前へ 次へ


 宏如も鷹と同じ、兵隊に行くのを夢見ていた。

「今度隣村の公民館で、徴兵検査があるんだ。
 僕はそれを受けに行くつもりだよ。
 青山は今いくつなの?」

「今年の夏で十五になったよ」

「十五! 少年兵は十四からだよ、そこにも書いてあるだろう?
 青山も検査を受けられるじゃないか! 僕と一緒に行かないか?」

 突然転がり込んできた夢の話に、鷹はどくんとひとつ鼓動を鳴らした。

「海軍も、募集してるのかい」

 唾を飲み込んでから、鷹は言った。

「もちろん! 青山は海軍兵志望だったね。
 でも検査で通っても、希望通りの軍に入れるとは限らないよ、無差別に配属されるんだ。
 僕はどこでもいい、国の為に戦えるなら何兵でも。
 今すぐに決めなくてもいいよ、検査なんていつでも受けられるんだから」

「行く! 俺も検査受けたい。一緒に連れてって、ヒロちゃん」

 鷹は焦って言った。今ここでぐずぐずしていたら、永遠に夢に届かない気がした。闘志が鷹の背をぞくぞくさせた。

「よっしゃ、じゃあ次の水曜だ、ここで会おう」

 宏如は口を強く結んで頷いた。





29/83ページ
スキ