空の兄弟〈後編〉
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宏如も鷹と同じ、兵隊に行くのを夢見ていた。
「今度隣村の公民館で、徴兵検査があるんだ。
僕はそれを受けに行くつもりだよ。
青山は今いくつなの?」
「今年の夏で十五になったよ」
「十五! 少年兵は十四からだよ、そこにも書いてあるだろう?
青山も検査を受けられるじゃないか! 僕と一緒に行かないか?」
突然転がり込んできた夢の話に、鷹はどくんとひとつ鼓動を鳴らした。
「海軍も、募集してるのかい」
唾を飲み込んでから、鷹は言った。
「もちろん! 青山は海軍兵志望だったね。
でも検査で通っても、希望通りの軍に入れるとは限らないよ、無差別に配属されるんだ。
僕はどこでもいい、国の為に戦えるなら何兵でも。
今すぐに決めなくてもいいよ、検査なんていつでも受けられるんだから」
「行く! 俺も検査受けたい。一緒に連れてって、ヒロちゃん」
鷹は焦って言った。今ここでぐずぐずしていたら、永遠に夢に届かない気がした。闘志が鷹の背をぞくぞくさせた。
「よっしゃ、じゃあ次の水曜だ、ここで会おう」
宏如は口を強く結んで頷いた。
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