空の兄弟〈後編〉

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『愛国の熱血少年よ、来たれ!』

 そんな見出しのチラシを鷹が手に入れたのは、秋が深まった頃、知り合ったばかりの年上の友人の久保くぼ宏如ひろゆきが、半ば強引に手渡したからだ。

「ヒロちゃん、どうしたんだい、これ?」

 宏如は鷹のふたつ年上だったけれど、この時代では珍しく、年下に敬称されなくても怒らない男だった。

 実際そうさせない雰囲気を持っていて、宏如自ら、ヒロちゃんでいい、小さい頃から皆にそう呼ばれていたからと、鷹に言っていた。

 穏やかで優しいこの青年とは、意外にも鷹から声を掛けて知り合った。

 鷹は畑仕事の終わりにひと息つける場所を密かに持っていて、それは東京の下町が微かに見える小高い丘、そこに宏如もいた。通学のついでに立ち寄るらしかった。

 初めて宏如を見た時からずっと鷹は感じている、何故だか彼は儚げで、消えていってしまいそうだ。宏如の人柄がそうさせているのか。

「青山、雑誌で見つけたんだ。
 徴兵は二十歳からだけど、僕たちみたいな低年齢の男子たちにも、今すぐ兵隊に行けるチャンスがあるんだ」

 滅多に感情を表に出さない宏如が、興奮して言った。





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