空の兄弟〈後編〉

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 ここからじゃ遠くて、仔猫がどんな顔をしているのか全然わからない。

 悟は近くに行こうとして歩き出した。

 それを見て、易は慌てて背後から悟の両脇を締めた。

「だから、カン太丸が怒るって、さっきも言ったでねえべか」

 易もきっと悟の様に近づこうとして、黒猫に牙を向かれたのだろう。

 悟は上目づかいで口をとがらせた。

 仔猫たちがピキーッ、ピキーッと声をあげ、母猫の腹でもぞもぞ動いている。

 前足で母猫の腹を押しながら乳を飲んでいるのだ。

「空悟、おめ、餌どうしただ、カン太丸の餌」

「へ?」

 そうや、俺、確かに餌の皿を手に持っとった。

 でも悟の手には何もない。悟はさっきの易とのとっつかみ合いを思い出した。

「はっ、そんなもん、お前のせいで下にぐちゃぐちゃに落っこってしもうたわい」

 易の締めつける両腕をふりほどき、悟はふんと鼻息を鳴らしながら言った。

「これからはここに餌を運んだほうがいいべな。洪ちゃんと清作にも言っとくべ」

 さあ、本当に暗くなってしまう前に林から出よう、と悟と易はまわれ右をして、まっすぐ歩き出した。

 こうしておけば、次に来る時、林の外のどこから入ったらいいかが簡単に分かるからだ。





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