空の兄弟〈後編〉

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 快晴なのに、林の中は薄暗かった。

 たくさんの葉をつけた木の枝たちが四方八方にめいっぱい拡げてみせて、まるで雲と同じように青く高くなった空を覆っている。

 小学校に入る年齢に満たない二人の少年は、何故か林に入った途端足取りを重くしていた。

「しっかり歩かんかい、易」

「おめえこそ」

 二人は気付いていないが、彼らは無意識に恐怖を感じていたのだ。

 彼らは次第に言葉を掛けなくなった。

 自分の発する声が、意外とこの林では響く事に気付いたからである。

「カン太丸う、どこだべかあ、返事さしてけれえ…」

 やはり声が響く。易は言葉を尻すぼみにさせた。

「び、びくびくすんなや、男やろ」

 悟の怒鳴り文句すら、なんとまあ弱々しいものになってしまったことか。



 林の中に足を踏み入れてからずいぶん時間が経った(と悟と易は思っている)のに、黒猫の姿をまだ見つけることができない。

「ああ! あのクソ猫! どこまで心配させれば気が済むねん! ええ加減にしろやあ!」

「あっ、カン太丸の悪口言っただな。いい加減にするのはおめえのほうだべ! なしてそげに短気なんだべか!」

「あーっ、お前にそんなことが言えるのんか。猫なんかに骨抜きになっとるお前なんかに!」

「やるだか!?」

「やったろやないけ!」

 怒りが恐怖の影を追っ払った。

 どんなに声が響こうが、悟と易はかまわず取っ組み合った。

 黒猫の餌のことも忘れて、下に落としてぐちゃぐちゃにこぼした。





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