空の兄弟〈後編〉
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「ヤッちゃん、もっと気を付けたほうがいいと思うよ」
清作は真面目くさった顔で言った。
「何をだ? 母ちゃんに黙って餌持っていくことをが?」
「それもあるんだけどさ、ってヤッちゃん…黙って毎日運んできてるの? まあいいか…
あの黒猫、多分腹の中に赤ちゃんいるよ。
俺ずっと前に妊娠中の猫見たことあるけど、あんな風な後ろ姿だったよ。
腹の部分が異様に横に膨れているんだ」
「へええ! そうだっただか」
なんでも知っている清作を易は尊敬の眼差しで眺めた。
「ええなぁ、ネコの赤んぼ、俺見てみたいわ」
恍惚の溜め息混じりで悟は言った。
「ヤッちゃんが持ってくる分だけじゃ足りないんじゃないか?
おなかん中の子供にも栄養をあげなくちゃあな。人間と同じだろ?」
洪助は四人で交代で黒猫に餌を与えることを提案した。
易はあの黒猫と出会ってから毎日昼ごはんしかあげられていないというので、これからは朝ごはんも加えようということになった。
ただし夜だけはどうしようもないので(子供だけで真っ暗闇の散歩、というわけにはいくまい)、それは今まで通り黒猫に我慢してもらうことにした。
「俺達だけの秘密だぞ」
四人の少年たちは丸く囲って、その中心で互いの右手を重ね合わせた。
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