空の兄弟〈後編〉

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「うそだべー!?」

 易は仰天した。

「あ、ほんまや、ちんちんついとらん!」

「馬鹿、そういうことは露骨に言うんじゃねえ」

 黒猫の尻を見て悟が叫ぶのを、洪助は一度咳払いをしてから、悟の後頭部を思いきりはたいた。

「カン太丸う、おめオスじゃないんだべか。
 おめ真っ黒いからよう、おらてっきりオスだと思っただよ。
 でも、カン太丸のままでいいべ?」

 易は少々落ち込んだ様子で、橋の下にいるカン太丸と名付けられた黒猫に言った。

 黒い牝猫は牛乳を飲むのをやめ、一斉に橋の上から頭を垂らしてこちらを見ている四人の少年を眺めると、静かに後ろを向いて橋の下から出た。

 そして、子供だけでは入ってはいけない林の中へ消えていった。

「気いつけて帰るだぞ」

「え? ここが住処じゃないの?」

 易の言葉に洪助は不思議そうに言った。

「ここはあいつの餌場だあ。
 おらがいつもここに食べ物を運んでくるんで、あいつは食べに来るだけだ。
 あいつの寝床がどこにあるか、おらにもわからないだよ。
 さっき洪ちゃんが、カン太丸飼うのを母ちゃんが許さなかったんだろうって言ったけど、それもあるだども、カン太丸が行きたがらねえんだ」

 易は一生懸命に説明した。





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