空の兄弟〈後編〉
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「ははあ、わかったぞ清作、空悟」
探偵気分がまだ抜けないらしく、洪助はそれらしいポーズをとってみせて言った。
「ヤッちゃんの様子がおかしかったのは、今の黒猫が原因なんだろ。
ほんとは家で飼いたいけれど、お母さんがそれを許してくれなかったもんだから、ここでこそこそ黒猫に食べ物を運んでいるんじゃないのか。
なあヤッちゃん?」
悟と清作は頭を垂らして橋の下を覗き込んだ。
易が家から持ってきたらしい器の中の牛乳を、黒猫はピチャピチャと舐めていた。
「お願いだ、この事、誰にも言わないでけろ」
易は懇願した。
「誰にもっていうか、おばさんには絶対に、でしょ」
清作は洪助と悟を見て言った。二人は笑いながらうなずいた。
「名前は? つけてあるんだろ?」
「んだ、カン太丸だ」
洪助の質問に易は声を弾ませて答えた。
「かんたまる!」
三人は叫んだ。
「どこかの戦艦みたいな名前やなあ」
「そうか? 固まるみたいな、変な名前だろ」
悟と洪助の寝ぼけた反応をよそに、清作は易の両肩に自分の両手を乗せて、
「ヤッちゃん、折角で残念なんだけど…
あの猫、メスだよ」
と言った。
…