空の兄弟〈後編〉
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さて、ここに三人の小さな探偵の誕生だ。
彼らは、6歳の東北訛りの少年の行方を探し出すべく集まった、有能な(?)探偵たちなのだ。
しかし、事件はすぐに、あっけなく片付いた。
「うるさいど、逃げてまうでねえが!」
三人が勢いよく小川の板橋の上を駆けた時、橋の下からそれが聞こえた。
「ヤッちゃん?」
洪助が呼び掛けると、易がのろのろと出てきた。
彼は決まり悪そうにしていた。
「こんなとこにおったんかい」
「逃げるって、なんのことさ」
清作は、易が怒鳴った言葉に疑問を感じ、そう言った。
すると易、目を泳がせ、もじもじとしだした。
「ニャア」
その易の脚と脚の間から、ツヤのある毛並みの黒猫が顔をひょいと出し、ひとつ鳴いた。
「あっちゃあ!」
易は腰が抜けた様に座り込んだ。
「ネコだ! ネコだ!」
悟が目を大きく開いて、はしゃぎたてた。
すると黒猫は、それに驚いたのかどうかわからないが、易の脚に沿ってしなやかに後ろへ回り、橋の下へ下りた。
「静かにはしゃぐべよ、これだからガキは困るべ」
易にそう言われて、自分だってガキのくせに、と悟は心の中で言い返した。
それから、静かにはしゃぐて、どないすりゃ出来るねん、むちゃくちゃな奴、とも思った。
…