空の兄弟〈後編〉
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引き金を引いている間は自動的に連続発砲する機関銃の弾は、親父を殺しただけでなく、森の木々や人家の屋根なども掠めたらしい。
それに気付いて村人たちが次々と家から出てきた。
その最中、鷹の耳がどこか遠くで鈍く響く爆音を捉えた。
「なんてひどい…」
「どうしてこんな小さな村を攻めてきたんだか…」
親父の葬儀は速やかに行なわれた。
親父が死んだ場所の血のりは砂で無理矢理隠された。
血の臭いはしばらく消えなかった。
後で聞いた話だが、あの飛行機が残骸と化して山奥で見つかった。
操縦士が焼け死んでいた…丸焦げで見る影もなかったらしい。
鷹たちが最初に見た時はすでに機体の調子がおかしかったようだ。
何故機関銃を発砲してきたのか。
おそらく操縦士が機体を持ち直す際に身体が硬直状態となり、偶然にもそれが引き金に指を掛ける姿勢となった。
飛空振動で引き金が引かれたのだろうと推定された。
誰がそんな事を言い出したのか知らないけれど。
その数日後、村の男達が集まり、その中に鷹もいたのだが、今回の出来事の教訓を活かそうと、村の数ヶ所に防空壕を掘る事になった。
リアカーの親父は防空壕にいたら死なずに済んだだろうか。
他にも何か色々難しい事を考え出そうとしたが、何を考えようというのだろう。
もうあんな、犠牲者が出なければいい。
そう思いながら、鷹は穴を掘った。
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