空の兄弟〈後編〉
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「さっさと歩かんかい、た
鷹は、悟がどんなに怒鳴っても動かない。
飛行機のエンジン音が遠くから聞こえ始めた。
「──日本の戦闘機じゃない」
鷹がやっと口をきいた。
その直後、エンジン音がやかましいセミの声をも抑えて三人の耳をつんざいた。
鷹も悟も風結子もぎょっとした。
今まで見たことのない、とんでもない近さで飛行機が飛んでいた。
しかも日本空軍のものではない、機体のどこにも日の丸なんてなかった。
「敵機来襲ーー!!」
心臓が浮くような思いで鷹は叫んだ。
ゴーッという音が渦巻く中、鷹は風結子の手を取り、走り出した。
そしてぼけっとして飛行機を見上げる悟を抱え、小川の板橋の下に潜り込んだ。
敵軍が攻めてきた、この村に!
他の皆はこの事態に気付いているのだろうか。
耳と目を一緒に覆って身体を縮込ませていると、飛行音は遠ざかり、一瞬だけ静かになった。
その数秒後、飛行機に驚いて鳴き止んでいたセミがまたジリジリと鳴き出した。
…