空の兄弟〈後編〉
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満遍の笑みを浮かべている悟を見て、鷹は舌打ちをした。
「私と青山くんも兄弟になるのね。どっちが上になるのかしら」
「関係ないだろう」
風結子の質問に鷹は即答したが、それに続く言葉が出るのにだいぶ時間がかかった。
「俺は…あんたと兄弟になる気なんか、全然ないんだ」
そして長い間編み続けてきた二つの麦藁帽子がついに出来上がり、一つをおさげ髪の風結子の頭に乗せてやった。
「そうね…実は私もあまり気が乗らないの」
しばらく黙った後、風結子が言った。
そして、
「どうかな、空ちゃんの弟さん?」
首を傾け、口元を緩ませながら言うと、
「おかしくないよ、空悟の姉ちゃん」
口をとがらせ、ほんの少し両頬を赤く染めながら鷹は言った。
それから自分も、林の木漏れ陽を避ける為、出来上がったばかりの麦藁帽子を深く被り、悟が投げ出した釣りの続きを始めた。
悟は、夢うつつで自分の弟と姉の会話を聞いていた。
この二人が兄弟の誓いをせえへんのはやっぱり、た
などと考えている内、寝息を立てはじめた。
…