空の兄弟〈前編〉
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雨はいつの間にか止んでいた。雲の切れ間から陽が射すという、美しい景色を見ることができた。
家路の途中で、悟は鷹に青い指輪の首飾りを失くしたいきさつを話した。
辛いな、悲しいな、と鷹はつぶやいた。何て慰めていいか分からなかった。
だけど、今はあれを叔母さんによく見せてあげられなかったことが悔しい、と悟は言った。
家路の途中で、そういやなんでお前あの林におったん、と悟は鷹に訊いた。
すると鷹は、麦藁帽子が完成した、それを伝えに探していたと悟に告げた。
悟は狂喜して踊り出した。
家路の途中で、お前傘はどうした、と鷹は悟に訊いた。
「──しもうた!」
二人は振り返って100mくらい向こうの小川の板の橋まで全力疾走した。
やがて二人の目に、悟が置き去りにしてしまった開きっぱなしのボロ傘と、その上に広がる雨上がりの青空と、そこに架かった大きな虹がはっきりと映った。虹を見るのは二分人とも初めてだった。
※よければこちらもどうぞ
→紙に書き殴った時代・⑥
→【空の兄弟】(アメ版)中間雑談・3
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