空の兄弟〈前編〉
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さっきも言ったけど、この林は小さい子供は立ち入り禁止なんだ。
だけど親たちは仕事で忙しくて、俺たちの相手なんかしてくれない。
俺とヤッちゃんはよそもんだから当たり前だけど、赤ん坊の頃からこの村に住んでる洪ちゃんでさえこの林の中を知らない…どうしても中へ入りたかった。
そこへ登場したのが東京から来た鷹だ。
中学生以上なら付き添いを許されていた、どうしても兄貴分として仲間に引き入れたかった。
ちょっととっつきにくい感じだったけど、俺たちの話をよく聞いてくれるやつだった…すぐに仲良くなれた。
(鷹兄、林ん中入ろうぜ)
(もうずっと前からおらたち行きたかったんだべよ)
ある日、俺たちはいよいよ林の探検を鷹に持ち掛けた。
そういえば、この日に限って鷹は乗り気じゃなかったみたいだ。
(林は立ち入り禁止って聞いてるぞ。危ないんだろ)
(あそこは保護者さえいれば子供も入っていけるんだ)
(鷹兄が俺たちを守ってくれよ)
(保護者になってけれ、鷹兄)
渋る鷹を説得して、俺たちは遂に林の中へ入った。
(滑らないように気をつけろ)
(おう)
(わかってるよ)
あの日も今日みたいに地面がぬかるんでいたっけ。
あいつほんと愛想ないけど、俺たちのこと気にかけてくれてたんだ。
俺たちはそう信じていたのに。
…