空の兄弟〈前編〉

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 それを見て、清作と易は顔を見合わせた。

「俺も謝る、鷹とは違うから。
 俺が取っちゃえなんて言わなきゃよかったんだ」

 清作が言った。

「おらも謝るど、鷹とは違うがら。
 おらが、おら達が、おめをけしかけなきゃよかったんだべ」

 続いて易が言った。

 二人して泥だらけの手で悟の涙を拭うものだから、悟の顔はすっかり黒くなった。

 でもわざとやっている様じゃないから文句は言えなかった。

「もうええわい」

 悟は言った。

「それよりもな、なんやねん、たとは違うって?
 俺はお前らがあいつとケンカしたのを知っとるけど、理由は知らん。
 なんでそんな目の敵にするんか」

「お前なんかに言う必要はない」

 洪助は強い口調で言った。

「そうだ、だいたいお前さっき俺たちのケンカには関係ないって言っただろ」

「んだんだ、洪ちゃん帰るべ。このままこいつに付き合ってたら風邪ひくべよ」

 洪助の後ろで清作と易が口々に言った。

 そして三人同時に悟に背を向け歩き出しても、悟は言葉を続けた。

「でもな」

 悟は一度息を飲んでから言った。

「たはお前らとケンカして変わった。
 けど、俺と出会ってあいつは今元に戻ろうとしているんやて、伯母さんがそう言いはってたわ。
 俺、元のあいつがどんななんか、見てみたい気もするのや。
 そうすればな、たの奴、俺に対してもっと愛想よくなると思うねん」

 洪助は立ち止まった。

「洪ちゃん!」

 清作が叫んだ。

 そして、あいつあんな事言ってるけど遠回しに仲直りしろって言ってるんだ、と耳打ちしたが、それでも洪助は動かなかった。

「じゃあ教えてやる」

 洪助は悟に向かい、この坊やの小さな手を掴み、林の中へ引っ張っていった。

「洪ちゃん? 待ってけろ!」

「このチビをあそこへ連れていくつもりなの?」

 清作と易が慌てて洪助に追いついた時、洪助は、ぽかんとして自分に引っ張られている悟に振り向かないまま言った。

「あいつがどんなに酷い仕打ちをしたかをお前に教えてやる。
 何もかも話してやる──あいつがどんなに間違っているかを」





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