空の兄弟〈前編〉

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 一体どこから話せばいいのやら。

 鷹坊は3月になる前の雪深い頃からこの村に疎開してきていたのさ。

 ちょっと遠い所に学校があるんだけども、鷹坊は学校に通っていないんだ。

 畑仕事をさせる為で、私の所だけでなく、男手の足りない畑にも行って貰いにね。

 ところが、あの子はあんまり畑仕事をやらなかった。まだ雪解けじゃなくてやれる仕事も限られていたこともあるんだけどね。

 遊び相手が出来たのさ、させられていたと言うべきか。さっき言った三人の子供、洪助くんと清作くんと易くんさ。

 あんなに年下の子供が相手じゃ、鷹はきっとつまらない思いをするだろうと思ったらさ。

 あの子もまだまだ子供だね、遊びに関してはすっかり釣り合いがとれていた。

 あったかい格好をして、いつもその子たちと雪遊びをしていたのさ。



 3月の半ばになってようやく雪解けが始まった。

 雨も沢山降ったから、積雪が全て無くなるのにたいした時間はかからなかったんだよ。

 ある日、鷹坊はいつも通り三人の子供と遊びに出掛けた。

 ところが、陽が沈もうって時分になっても帰ってこない。普段ならそんなこと絶対ないのに。

 さすがに心配になったから、探しに行こうと思った矢先だ。

(大変よ、水戸部みとべさん。
 あんたのとこの鷹くん、今土田さんとこにいるんだけど…
 とにかく一緒に来てちょうだい)

 近所のある奥さんが息を切らしながらやってきて、そんな事を言うのさ。

 何かあったのだろうか、鷹坊が何かやらかした?

 ──私の予想は当たっちまった。

 土田さんの家の縁側で、三人の子供がうずくまっていた。

 頬は赤く腫れあがり、肌が見える所には幾つもの痣が…うっうっと声を押し殺して泣いていた。

 鷹坊は、両脇を村の男達に固められて身動きが取れないでいた。

 鷹坊も頬が腫れて…でも子供たちよりも酷く腫れて、口端から血を流していた。それを拭き取りもしないで、ただただ地面を見つめていた。

 その鷹坊の目の前に、三人の子供の母親たちが並んで、恐ろしい形相であの子を見下ろしていた。

 とまあこれが、私が土田宅に着いた時の状況だね。



 で、話はまだ展開するのさ。





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