空の兄弟〈前編〉
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「ちょっと待った、洪ちゃん!」
清作が洪助の右腕を抱えて後方に引っぱった。
「鷹がこっち見てる。大事にならない内に帰ろうよ」
「……」
狼の様な殺気のこもった目で鷹を見つめる洪助を、清作と易はあたふたとなだめながら畑から離れた。
でも、その二人も洪助と同じ様に鷹を見ていた。
悟がそれに気付いて二人と目を合わすと、清作も易もふいっとそっぽを向いて、洪助を引っぱって歩き去った。
悟は3人の様子のおかしさに首をかしげながら鷹の方を向いて、
「どや、俺かて役に立つやろ?」
と言って、えへんと胸を張ってみせた。
「ああ、そうだな」
鷹は感謝を込めて言ったつもりだったけど、やっぱりそんな風には聞こえなくて、
「ふん、愛想のないやっちゃ」
悟の機嫌を損ねた。
…