空の兄弟〈前編〉

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「洪ちゃん、どうするだ」

 東北訛りのヤッちゃんことやすが、学生帽の洪助こうすけに言った。

「やいお前、俺たちより年下だろ、偉そうだぞ、生意気な奴」

 洪助はそう言いながら軽く小突いて悟をよろめかせた。

 すると悟、かっと頭に血がのぼって拳骨で洪助の二の腕を加減なく叩いた。

「いってえ!!」

 細い腕に似合わず強い力だったので、油断していた洪助、余計に痛みが増す。

「こっ、洪ちゃん、大丈夫?」

 清作と易、痛みに悶える洪助を慌てて支えた。

「ふん、弱いくせに年上面するからや、ボケ!」

 べーっと舌を向けて更に挑発する悟。

 この一連の行動に鷹も驚いた。たった5歳の子供がここまでやるものか。

「この野郎…調子に乗るんじゃねえぞ!」

 わなわなと震えて洪助が悟の胸ぐらをぐいと突き上げた。

 悟はそんな洪助を冷めた目で眺める。





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