空の兄弟〈前編〉

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 悟の風邪がすっかり治った頃、梅雨休みの快晴に入った。

「どこ行くねん」

「畑だ。俺たちんとこのな」

 鷹は鍬を担いで家から10数メートル離れた所にある畑へ出かけていった。

 面白そうなので、悟は暇つぶしに鷹についていった。

「ふん、のん気な奴」

 仕事の邪魔するなよ、と釘を刺したけど、悟はあまり聞いてない様だった。

 小さな畑がいくつかある中のひとつをぐるっと一周して、

「なあ、これ全部お前がやったんか、すごいなあ」

 目を輝かせて悟は言った。

 鷹はいい気分になって、口ずさみながらまだ何も植えられていない畑の土を耕し始めた。

「単純な奴やのう…」

 耳のいい鷹にも、この悟の小声は聞こえなかった様だ。



 陽が高くなって、じわじわと暑さが身に染みてきた。

 鷹はふうとひと息ついて、ズボンの後ろのポケットに無造作に入れてあったタオルを取って、額の汗を拭いた。

「ふーっ、暑いな…」

 そう言ってタオルをまた無造作にしまった時、畑の一角で何やらざわめきが聞こえた。

「これ、鷹の畑?」

「そうらしいなあ。
 遊んでばっかだったくせに、急に仕事をし出して、生意気なんだよな」

清作せいさく、おめやれや」





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