空の兄弟〈前編〉
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鷹はふうと溜め息をついて、悟の青ずきんに再び手を触れた。
すると、さっきは気付かなかった、【木谷悟】と名札が縫い付けてある所で何か固いものを指に感じた。
裏返してみると内ポケットが付いていて、そこに入っていたのは首飾りだった。
淡い青の指輪、そのリングに細い皮の紐をくくりつけた、とても単純なもの。
首飾りを人差し指に掛けて、鷹は時計の振り子の様に左右に動かした。
自分の好きな青色がゆらゆら揺れるのをしばらく眺めていると、急に眠気が襲ってきた。
悟が眠っている布団の横に仰向けになったが、それでも鷹は首飾りをいつまでも左右に振ることをやめなかった。
「どないする気やねん、それ」
突然の声にぎくりとする。
目だけそちらへやると、同じ様に悟が目だけをこちらに寄越していた。この振り子の気配を感じたのだろうか。
「やっと起きたか。
ここは叔母ちゃんの家だ。
お前、風邪で2日も眠りっぱなしだったんだぞ。
気分はどうだ」
しかし悟は鷹の質問には答えず、
「どないする気やねん、それ」
と、ただそれだけを繰り返した。
…