空の兄弟〈前編〉

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 それを聞いた途端、鷹はぶはっと吹き出した。

「なんで笑うねん」

 むっと口を尖らせて悟が言う。

「いい名前だ、お天気野郎のお前にぴったりじゃないか」

 感情の起伏の激しい悟に鷹は皮肉を言った。

「嫌な奴やなぁ、お前…」

 そう言うと、悟は片頬を鷹の背中にくっつけて目を閉じた。

 鷹が歩く度揺さぶられて、悟に眠気が襲う。

「嫌いでけっこう。どうせ俺は子供嫌いだからな」

「嫌いなんて言うてないやんか…」

「……」

 この、空悟と名乗るたった5歳の坊や。話していると、幼児とはとても思えない。

 この子に対しては尖った感情が芽生えない、そんな自分に対して鷹は人知れず苦笑した。





 叔母の幸代の待つ家がもうすぐそこに見える。

 雨はすでに小降りになっていて、雲から光が洩れていた。

「ほら着いたぞ、このまま入るからな。



 …空悟」

 熱でぐったりしている背中の悟の希望通り、鷹が新しい名で呼んでやると、返事をしない代わりに悟は、鷹の背中でもぞっと動いた。





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