空の兄弟〈前編〉

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 雨が止む気配のないまま悟を背負って、家が霞んで見える所まで戻ってくると、

「あんなぁ、俺なぁ…」

 眠っていると思った悟がうめいた。

「悟なんて呼んでほしくないねん…」

「なんだそりゃ」

 子供の迷い言だと思って鷹は適当に返事をする。

「大阪出る時に名前変えたんや…最高にええ名前やで」

 悟はそう言ってくくくと笑い出した。

「なんて名前なんだ」

「お、知りたいか」

「その名前じゃないと返事をしないんだろ。早く言え」

「それもそうや」

 そう言ったのに、悟はまだその名前を告げない。

 おちょくってるのかと腹を立てて、背中の悟に顔を向けると、悟は高く天を指していた。

「そ…空?」

 空を見上げて、変な名前だと思いながら鷹が言うと、

「やあい、ひっかかった! 空と俺やねん」

 悟はけらけら笑って、

「まだ分からんか。
 空悟くうごや。
 空を悟る…かっこええやろ?」

 不思議そうな顔の鷹に言った。





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