ハジメの一歩
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【こんにちは。週明けの月曜、いかがお過ごしですか? 後藤樹深です。
先週予告した通り、今回も録音放送でお送りします──】
タツミくんに貰ったCDをプレイヤーに掛ける。
ホノカにはもう手渡した。大事そうにバッグにしまって、俺のまかないをカウンター席で待っていた。
「北川、なんでこんなに早い上がりなんですか?」
「大学の仲間と集まるんだとさ。別に暇だからいいけどさ」
出来上がった味噌をカウンターに置いて、俺も厨房から出てホノカの隣に座った。
麺をすすりながら、あの海でのロケの様子に耳を傾ける。
「へえぇ、ほんとに沢山聞いて回ってたんだなぁ」
「ふっ。そうですね。
あ、ここ、タツミさんがハジメさんの焼きそば持ちながら回った所じゃないですか?」
【これ? いいでしょ、あそこのお兄さんが作ってくれたんですよ。パクッ】
楽しそうにゲストと話すタツミくん、ブース内と変わらず外でも自由奔放。
他にも、ここは○○した時だとか、この歌懐かしい、知らない歌だとか、ホノカと色々話しながら、録音を聴いていた。
【おめでとうございます。鮮やかなひと振りでしたね】
「あっ」
「あっ」
同時に声を上げた。スイカ割りの後の、俺とホノカへのインタビュー。
「な…なんか、恥ずかしいな…? 俺、こんな声なの?(苦笑)」
「そ…そうですね…自分の声じゃないみたい(苦笑)
あ、でも、ハジメさんはいつもこの声です(笑)」
「ホノちゃんもな(笑)」
自分の声の違和感に身悶えながら、聴き続ける俺達。
ホノカが夏の思い出の曲を言ったところで、スタジオでの録音に引き継がれた。
【この曲、俺も大好きなんで、演奏させて下さい。
○○の【▽▽】】
そう言ってタツミくんは、静かなアルペジオを奏で、その旋律に自分の歌声を乗せた。
「うわぁっ…」
ホノカがタツミくんの歌声に息を飲んだ。
「ハジメさん。実は私…タツミさんが歌うの聴くの、初めてです」
「えっそうなの?
…くくくっ、上手いだろ? アイツ(笑)」
「(笑) ハイ」
プレイヤーからのタツミくんの歌声に聴き惚れるホノカ。
でも俺は…彼の歌声より耳に残るものに気を取られていた。
ギターの弦の上を指が滑る、キィッっていう音。
この音が…俺の心の中で時々鳴る音によく似ていて。
それは
ホノカを想う時の音
勇実の時にはなかった
特別な音
「あの、さ」
まだ歌の途中だったが、抑えられず…遮った。
「ホノちゃん。
俺と…付き合って下さい」
…