ハジメの一歩

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「ハジメさん…? 私…」

「…うん」

「はぐれた時…すごく怖くて」

「…うん」

「どうしようって…思って」

「…うん」

「人、いっぱいだし…見つけるなんてムリ…って思って」

「…うん」

「北川が…ハジメさんが電話で、すごく切羽詰まった声してたって。見つけるからって」

「…うん」

「ハジメさんが…そう言ってくれてた間も…私…私…不安で…どうしようもなく…て…
 …あれっ…私、何責めてるみたいになってるんだろ…」

 俺の肩にホノカの額が当たる。ホノカの束ねた後ろ髪がサラリと俺の首筋を撫でる。

「…うん。ごめん。ごめんな。知らない場所で、ひとりにさせて…ごめんな」

「…はい…あ…いや…いえ…」

「…いいぞ? もっと…責めてくれても」

 俺は一度ホノカをおぶり直して、またゆっくりと歩き始めた。

「…ホノちゃん?」

「…はい」

「探してる間…今みたいに、泣きたいのガマンしてんだろうなって思ってた」

「…っ…」

 ホノカが俺の肩に押し付けたまま頷く。じんわりと…そこが濡れるのを感じた。

「早く…見つけたかった。
 キミが…あそこで待ってくれていて…ほんとによかった…
 俺の話…覚えてくれてて…サンキュな」

「…はい。
 ハジメさんが…来てくれて…よかった…」

「うん…んっ」

 その時、ホノカがほんの一瞬だけ…俺に強くしがみついて…すぐに力を抜いた。

 やばい。背中に伝わったホノカのやわらかさにクラクラしたのをごまかしたい。

「なぁ、ホノちゃん。靴買ったら…ここでごはん食べて…それで帰ろうな」

「…ふっ。そうですね。おなかすきました。何食べたいですか?」

「胃の中スッカラカンだからな。ガッツリいきたい(笑)」

「私も。ガッツリいっちゃいます。ふっ。ふふっ」



 もう一度、ホノカを振り返った。



 もう、瞳は揺れていなくて…



 離したくない笑顔が、そこにあった。





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【ハジメの一歩】中間雑談・4





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