ハジメの一歩

66/75ページ

前へ 次へ


「ココ…キレイ。ほんとに。水面に夜景が映って…
 橋も、レトロな感じがいいです」

 石造りの欄干に腕を乗せながら、ゆらゆらと揺らめく水面に映し出された夜景をじっと見つめて、ホノカは呟いた。

 俺もホノカの横に並んで、同じように夜景を眺める。

 花火が上がっているのは、夜景の方向から少し右へずれた上空なんだが、手前のビルに阻まれてイマイチよく見れない。

「うん。あー、でも、花火は、ちょっと残念か?
 あんなビルなかったからな…昔はもっとよく見えてたよ?」

「そうなんですね。
 …あっ? ハジメさん! スゴイ!」

 ホノカの叫びと、周りのどよめきと、爆音と、閃光がほぼ同時だった。

 手前のビルの高さを更に越えて、尺玉の大輪が見事な形で夜空を彩った。

「うわぁっ…」

 フィナーレの始まり。ヒュルルル…ドーン、ドーン、ひっきりなしに打ち上げられる。赤も、青も、黄色も、なんて鮮やかで綺麗なんだろ。

「わぁっ、ハジメさん、今の、ヒマワリでしたよ?」

「おー。スマイルのヤツも、すげークッキリしてたなぁ(笑)」

 変わり種も混じって、どんどんテンションが上がる。

 フィナーレの所要時間は、大目玉のグランドフィナーレを含めて約20分。

 時折ちょっとの小休止が挟まれて、その間にギャラリーの歓声や拍手が湧いて、それが止まない内に次の花火が上がる。下を向いてる暇なんてなかった。

 欄干に置いていた俺とホノカの手の側面が…いつの間にかピッタリくっついていた。ホノカの熱が伝わる。

 花火を見上げたまま…ホノカの指先を、そっと掴んだ。

 ホノカが硬直するのが、ダイレクトに分かった。でも、ホノカはこっちを見ない、俺と同じように、花火を見上げたまま…



 俺の指先を、キュッと掴んだ。





66/75ページ
スキ