ハジメの一歩

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「ばっ…その足でここまで来たの…!?
 もう…ムチャクチャするなぁ…」

「あは…裸足で歩くのは慣れてるから」

「それは道場の床での話だろ? 足、切ったりしてないだろうな?」

「わっ…はい…大丈夫、と思いますけど。
 あの…あまり見ないで貰えると、ありがたいんですけど」

 跪いた俺に急に足を持ち上げられて、しどろもどろになるホノカ。

「ばか言うなよ。あーあ、小砂利がいっぱい付いてる。傷は…なさそうだな」

「ふっ。ふふ…っ、ハジメさん、くすぐったい」

 ホノカの足を軽くはたいて、傷を作ってないか、マッサージでもするかのように、足裏のあちこちを触る。

 ホノカは身をよじって、くっくっと笑いを堪えてる。

 アスファルトを踏みしめたデコボコの痕が痛々しそうな事以外は、特に目立った外傷は無かった。

 俺はジーパンのポケットからハンドタオルを取り出して、それでホノカの右足を包んだ。

「あ、これ、まだ使ってないヤツだから、キレイだぞ?」

「ふっ。ありがとう…ハジメさん」

 ひと仕事終えて、改めて、久しぶりの場所を見渡す。

「うーん…穴場だったはずなんだけどな(笑)」

「(笑) ですよね。でも、ハジメさんが言ってたのは間違いなくココだって思いましたよ。
 最初に通りすがりの人に、この辺りで夜景の綺麗な橋ってどこですかって聞いて…そしたら、△△橋って。
 ハジメさんが言ったの、確か○○橋だったと思ったけど…私の聞き違いかもしれないし…ハジメさんいるかもって思って…そっちに行ったんですね。
 でも、そこからの景色は…そこもよかったですけど…なんか…ハジメさんが言ってたのと印象が違って。
 それで今度は、たまたま傍にいた警備員さんに道を尋ねて…そしたらここを教えて貰って…来られたんですよ」

 ホノカを助けてくれた人達に、俺も偶然逢えたんだ。不思議だけど…不自然とも思えず…導かれたんだと単純に思った。





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