ハジメの一歩

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「わ…かってるよ。見つけるから。早く教えて」

 言葉に詰まりながらも、ホノカを見つけたい一心でキタガワに頼む。

 キタガワぁ。違うって言うかもしれないけど、オマエもホノちゃん好きだったろ。

 俺、分かっちゃうんだよ、そういうの。

『XXXーXXXXーXXXXっす。
 …あ、にーさん。そういえばオレさっき、ホノカにメッセしたんすけど。まだ既読になってないっすね』

「…え?」

『逢えたら、心配させんなって言っといて下さいよ』

 じゃ、とキタガワはさっさと電話を切ってしまった。

 教えて貰った番号に掛ける。

【お掛けになった電話は、電波が届かない場所にあるか、電源が入っていないため──】

 繋がらない。まじか。だから既読にならないままなのか。

 ホノちゃん。はぐれた所から動いてないのか、それとも、倉庫に行こうとしてた事は分かってるはずだから、もしかしたらそっちに先に向かったのかも?

 倉庫の方へ足を向けた時、こんな会話が俺の耳に飛び込んできた。



(さっきの女の子、大丈夫かな? はぐれたみたいだったね)

(でも、待ち合わせ場所あったみたいじゃない。
 この辺りで夜景の綺麗な橋っていったら、そこの△△橋しかないでしょ)

(そうだね。無事に逢えたといいね)



「なっ…ちょ…っと」

 今の、ホノカの事?

 詳しく聞きたかったが、その会話をしてた二人組はあっという間に人混みに紛れてしまった。

 △△橋。観覧車のすぐ傍にある大きな橋。俺が連れていきたい小さな○○橋じゃない。

 でも、1回しか言わなかったし、ホノカが思い違いをしてもおかしくない。

 僅かな望みを頼りに、俺は△△橋に向かって人の波に逆らいだした。





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