ハジメの一歩
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「え? 何かあるんですか?」
察しのつかないホノカは、俺に聞いてくる。
「港の花火大会。懐かしいな。一度だけ、家族と見にいったっけな。
店があるからそれ以来ご無沙汰だけど。
ホノちゃんは? 市内じゃけっこう有名な行事だけど、行ったことある?」
「いや…遠くからなんとなく見た事はあるけど。人がすごそうなので、会場には行った事ないです」
「うひゃひゃ。そうだよなぁ。俺もその時は、会場からちょっと外れた所から見たんだ。
橋の上からでさ、海と夜景も一緒に見れて。○○橋。後で知ったけど、カメラマニアには穴場スポットで有名らしい」
「へえぇ…そうなんですね。綺麗だったでしょうね」
「うん。見せてやりてぇな。
…あっ。そんなら…見に行くか?」
「え?」
ホノカがビックリした顔で俺を見上げる。
「ホノちゃん時間があるなら。
いや、断ってくれていいよ? なんか俺、ナンパしてるみたいだな(笑)」
嫌悪感を持たれたくなくて、思わず予防線を張る。
「ふっ。ふふ…大丈夫です、時間あります。花火、見たいです…ふふっ」
「そう? じゃあ行くか。
…いつまで笑ってんの(笑)」
「だ…って。ナンパ。
今、私にじゃなくて誰か別の人にしてるハジメさん想像したら…
…似合わないなぁって…ふふっ」
そう言ってまだ笑いが止まらないホノカ。
「それは…そういう事をしない人って誉められてるって、受け取ってよろしいですかね?」
「(笑) ハイ。そうして下さい(笑)」
今日でホノカの中の俺が、ずいぶん変化を遂げたっぽい(笑)
ホノカのその笑顔を見れるのなら、どう変わろうが構わないや。
…