ハジメのエピローグ
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「男子も、いたんだ?」
「イエス…」
縁日を練り歩く最中に、同じクラスの男子グループと鉢合わせたらしい。
公園へ花火をやりに行くと聞いて、女子グループのひとりがついていきたいと懇願して…合流することに。
「ほー。その中に…ホノの好きなヤツはいた?」
「えっ、とー…あの、イエス…」
ガーン。
いや、思春期の女の子に好きなヤツいないのはそうありえないからな。当たり前当たり前…
「ほー。ソイツと…付き合ってた?」
「えー…と…イエス…一応」
ガガーン。
自分が最初の相手だって自惚れていた俺。
「でっ、でもね、付き合ってたっていうか、両想いだったってだけっていうか…
私、剣道で忙しかったし…ちょっとの期間だったよ?」
ナニその甘酸っぱい響き。両想いって。火花が散るのが終わって辺りが仄暗くなっても、ホノカのほっぺが真っ赤なのがよく分かる。
「ほー…ソイツとは…チューした?」
「!!!」
ホノカが思いっきり動揺した。まじかー。聞きたくねーけど、俺は踏み込む。
「ん? どーなの?」
「………イエス………」
ガガガーン。
ホノカのか細い声が闇に消えて、俺はホノカの手を掴んだまま項垂れた。
「たった1回だけ! その、花火の時に…それだけだから!」
「ほー…どんなチューだったのかねぇ…?」
心の声がそのまま出てしまった、その俺の言葉にホノカは宙に視線をさまよわせた。
あああ、バカじゃん俺。ホノカをからかいたいのが一転して、自分で自分の首絞めてる。
ファーストキスを思い返すホノカなんて見たくねぇし。
ちくしょー、うらやま。ソイツうらやま。
「あの、ハジメさん…?」
後頭部をガシガシ掻いたまま黙り込んだ俺を、心配そうに覗き込むホノカ。
若干口を尖らせてホノカと目を合わすと、ホノカは目を丸くした。
どんな表情のホノカも好き。こんな間近で見れるの、俺だけだよな? これまでも、これからも。
繋いだ手を一旦離して、もたれかかるようにホノカを前面から抱きしめて、すぐそばにあったホノカの唇にキスをした。
この唇は俺だけのもの。
付き合ってって伝えてすぐにしたあの時のキスから、今この瞬間まで。
そしてこれから先も、死ぬまでずっと。
…